著者/恵の丘長崎原爆ホーム別館
平和の鐘を、この丘から…
被爆者の想いを若い世代へ。一人一人の記憶を綴った被爆体験記。
オビには「平和の鐘よ…願いをのせて力強く響け長崎から…」と書かれています。どんな経緯から、「恵の丘長崎原爆ホーム別館」の利用者の方々
縲っかけは昭和56年長崎、恵の丘に来られた前法皇ヨハネパウロ2世が、被爆者の皆さんに語られた「あなた方の生き様そのものが、平和へのもっとも強烈なアピールなのです。」というお言葉をいただいたことにはじまりました。それから、被爆者は自ら持っている悲痛な思いを語るようになったと聞いています。ホームの季刊誌にも徐々に被爆体験記を掲載するようになってきました。そして被爆50年の年には、今まで記録してきた被爆体験をまとめさらに55年と、区切りの年に出版してまいりました。
出版するにあたって、まずは利用者の声に耳を傾けることから始められたのですね。
ええ、ですが…60年前のことで、被爆者の記憶も薄らいできています。ほとんどの人が身心に障害を持っており、自分の伝えたいことをうまく伝えきれないのです。また認知症等により記憶が定かでない人もいます。それをどのように聴いたらいいのか、被爆者の身になって考えることがとてもつらいことでしたし、苦労もしました。その様な場合は、ご家族の皆様に協力をいただき、母や父から聴いた体験談を文章にしていただきました。なによりも、被爆者にとって、苦しい体験は二度と思い出したくないことなので、その日の体調なども考慮しながら、時間をかけて根気よく聴き取りを続けました。
今回が3冊目の自費出版ということですが、いかがですか?
これまで50年、55年と、このシリーズを出版して全国へ発信いたしました。そして今回、昭和堂のスタッフに話を持ちかけたところ「ゆるり」というサロンがあり、自費出版のお手伝いをなさっているとの事でしたので、相談いたしました。やはりこの本が、いろんな方と出会って、そして平和のために役立っていくために、被爆60年という節目に、ここ長崎の地元から平和への思いを出版することの意義をあらためて感じています。
今後の抱負をお聞かせください。
老いてゆく被爆者の思いを若い世代へ伝えることは、私たち原爆ホームの使命であると思っています。これからも、利用者のみなさまが健やかに過ごしていけるよう、職員一同で精一杯のケアをしていきたいと思っています。
被爆60年。平和への願いは全世界共通の願い。決して風化させることなく、ここ長崎から、平和の鐘を全世界に響かせていただきたいと思います。